『人民の星』 5565号2面

米、規制改革要求強める 「年次改革要望書」を復活

 「日米経済調整対話」は、昨年一一月にオバマが来日したときに毎年開催することで合意していた。今回がはじめての事務レベル会合で、会合には、日本の外務省、アメリカの通商代表部をはじめ、日米の関係省庁が参加した。
 この日米経済対話は、「貿易の円滑化、ビジネス環境の整備、個別案件への対応、共通の関心を有する地域の課題等について日米両国が協力をしてとりくんでいくため」としているが、一昨年夏の衆議院選で人民の怒りから自民党政府が打倒されてとぎれていた、悪名高いアメリカの対日規制改革・構造改革要求の協議の場を復活させようというものである。
 会合のなかで、日米双方がそれぞれのビジネス界の要望をふまえて作成した「個別関心事項」をもとに協議をおこなった。そして、本年中に、二、三回程度会合をおこない、その上で協議の結果をとりまとめ、公表するべく、協議を継続していくことで合意した。

郵政・農業等10分野で要求
 アメリカ側が提示した「関心事項」なるものは、〇八年まで米政府が日本政府につきつけてきた「年次改革要望書」を基本的に踏襲したものである。
 具体的な要求分野としては、情報通信技術(通信、情報技術)、知的財産権、郵政、保険、透明性、運輸・流通・エネルギー、農業関連課題、競争政策、ビジネス法制環境、医薬品・医療機器(医薬品・その他、ワクチン、医療機器、化粧品、栄養補助食品)の一〇分野をあげている。
 前回の〇八年の「要望書」では、郵政は「民営化」という項目で、保険と農業は「その他の政府慣行」でくくられていたが、今回は、それぞれが独立した分野として要求事項が言及されている。それは、アメリカがこれらの分野での日本の規制改革・構造改革を重視しているということである。
 アメリカは、この「個別関心事項」でどんなことを日本に要求しているか。
 農業関連分野では、日本のきびしい残留農薬基準の見直しや「国際的に使用されている基準」にそって食品添加物の審査を急げなどと要求している。それは、アメリカ製農薬やアメリカ製食品の日本への輸入促進をはかるためである。
 郵政分野では、日本郵政グループの競争上の優位性を完全に撤廃して、保険と銀行サービスにおいて対等な競争条件を確立せよとか、かんぽ生命保険とゆうちょ銀行の業務範囲の拡大をみとめる前に、日本郵政グループと民間金融機関との間に対等な競争条件を整備せよともとめている。ようするに郵政の力をよわめアメリカ資本が進出し、支配しやすい条件を整備せよということである。
 保険分野では、一つには「共済」を問題にし、民間会社との「対等な競争条件」を要求している。日本では公務員や農業、漁業など広範な分野で共済制度がある。その市場を開放して、アメリカの資本が参入し支配できるようにしろということである。
 通信分野では、周波数割り当てへの競争の導入、NTT改革を通じた新規参入の促進、携帯電話の相互接続料金の引き下げなどを要求している。
 情報技術分野では、政府がICT(情報通信技術)を調達する場合、競争・透明性・公平性を高めよとし、患者のためと称して医療IT(情報技術)の早期導入を要求し、アメリカ資本が進出しやすいように要求している。
 医薬品分野では、「新薬創出加算」(新薬で一定条件を満たした場合に薬価改定を特許切れまで先送りする新ルール)を恒久化し加算率の上限を廃止することや、医薬品承認の新薬登録手続きを年四回から月一回にふやして開発から市場流通までの期間を短縮すること、血液製剤についてもアメリカ業界との協議などをもとめている。それは、アメリカの製薬資本の儲けの保証や日本市場への進出をつよめるためである。
 運輸・流通・エネルギー分野では、アメリカ製自動車を日本に輸出しやすいように自動車の技術基準ガイドラインを見直せとか、再生可能エネルギーにかんする規制制度の見直し、通関業務の簡素化・効率化などを要求している。
 アメリカの要求は、さまざまな規制や制約をとっぱらい、アメリカの資本のために日本の市場の明け渡しをせまるものである。見過ごしてならないのは菅政府が、「経済活性化のため」と称して規制・制度改革をすすめているが、それは、アメリカの規制改革・構造改革の要求にこたえるものであり、TPP参加と不可分にむすびついているということである。




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